乾燥肌対策と化粧品の考え方
「保湿」と「うるおい」。
ほとんどの化粧水に記載されている言葉です。
これは実は「規則で表現できることが限られている化粧品広告の中で、最もキャッチーな言葉である」ということもありますが、やはりそれだけ乾燥肌に悩む女性が多い、ということも現実でしょう。
ですが、男性はあまり乾燥肌になりません。
現在「スキンケアをしないとお風呂あがりの肌がバリバリ」という女性は多いと思いますが、スキンケア自体が発達していなかった時代にも女性の肌がそうだったかと言えば、そんなはずはありません。
ということは「女性だけがやるようになったスキンケアやメイクが、女性の肌を乾燥させている」という怖い考えが浮かび上がってきます。
乾燥肌になる要因はいくつもありますが、今回はそんな「乾燥肌」と「化粧品」の関係についての『真摯』なお話です。
【肌は本当は乾燥しないようになっています】
洗濯物を部屋に干しておくと、部屋の中の乾燥防止になります。
これは、洗濯物の水分が空気中に蒸散していくためで、洗濯物は乾くし、部屋の乾燥は和らぐし、一石二鳥です。
ですが、これと同じように、肌からも水分は空気中に逃げようとします。
洗濯物と人体は違う、と思うかも知れませんが、人体の60~70%は水分ですので、やはり肌からも水分は逃げていくのです。
ですが、肌は洗濯物のように完全に乾くことはありません。
これは肌に、水分を逃がさない仕組みが備わっているからです。
では、その仕組みとは何でしょう?
「皮脂かな?」と思う人は多いかも知れませんが、実はあまり皮脂は関係ありません。
それは『細胞間脂質』といって、肌の表面の角質層に存在している、人体がもともと持っている肌のバリア機能です。
【乾燥肌って、どんな肌状態?】
細胞間脂質とは、その名のとおり角質層の細胞のあいだを埋めている脂質です。
「肌のバリア機能」と呼ばれるその主な働きは、次のふたつです。
1.肌の外からの刺激や、異物の侵入を防ぐ。
2.肌の内側から水分が逃げるのを防ぐ。
また、角質層には細胞間脂質の他に、肌の水分を保持する『天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)』というものがあります。
主には細胞間脂質が重要になりますが、これらの作用により肌の水分は簡単に空気中に逃げないようになっています。
ですが、このバリア機能が壊れてしまうと、肌の水分は外に逃げやすくなってしまいます。
『乾燥肌』は、肌の細胞間脂質が正常ではない状態、肌のバリア機能が壊れていて肌の水分を保てない状態、と言えます。
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【なぜ、化粧品でバリア機能が低下するの?】
ではなぜ、肌のバリア機能が壊れてしまうのでしょう?
スキンケアの観点から見ると、特に問題となるのは「洗顔」「クレンジング」です。
洗浄料は「汚れを落とす、メイクを落とす」ものですが、これは言い換えると「油分を落とす」ことです。
一方、細胞間脂質も油分と言えます。
洗浄料の使い過ぎは、メイクや汚れだけでなく、細胞間脂質まで取り除いてしまう可能性があるのです。
また、物理的に肌を「こする」ことも肌のバリア機能の低下を招きます。
拭き取りのクレンジング(メイクを落とすのと一緒に肌までこすります)や、濡れた手でも使えるクレンジング(水で薄まっても洗浄力が落ちないように、もともと油分を落とすための界面活性剤が多く入っています)などは特に注意が必要と言えるでしょう。
それから、不要な洗顔自体も乾燥肌を助長します。
油性肌の方はともかく、乾燥肌の方は朝の洗顔は水かぬるま湯だけにしてもいいでしょう。
熱いお湯を使うと、肌の油分が落ちやすくなってしまします。
【乾燥肌でメイクや洗顔に注意したいこと】
ここまでの話を踏まえて、乾燥肌の人がメイク品や洗浄料を使うときに気にかけておきたいことをまとめると、次のような感じになります。
1.ベースメイクはできるだけクレンジング不要のものを選びましょう。カバー力は落ちるかも知れませんが、石鹸で落とせる程度のものがベストです。
2.ポイントメイクについても、ベースメイクと同じようにクレンジング不要のものがよいですが、難しい場合はポイントメイクをした箇所だけにクレンジングを使い、顔全体にクレンジングを使うのを避けましょう。
また、マスカラなどはお湯でオフできるタイプのものを使うのがベストです。
3.朝の洗顔は、洗顔料を使用せずに水で済ませましょう。
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【乾燥肌対策は保湿化粧水でOK?】
では、乾燥肌対策にどういう化粧水やクリームを使えばよいのでしょうか?
まず考えなくてはならないのは「バリア機能が壊れている状態では、水分を与えても意味がない」ということです。
いくら化粧水で水分を与えても、肌の内側に水分を留めておくバリア機能が正常に働いていなければ、水分は逃げていきます。
保湿効果がある化粧水だけを使っても、乾燥肌対策にはならないのです。
一方、傷口が自然と治っていくように、人間の肌にもバリア機能を正常に戻そうという性質が備わっています。
ですので、乾燥肌に使う化粧水やクリームは、肌が健康な状態に戻ろうとするのを邪魔せず、できればそれを助けるようなものであるのが理想的です。
また逆に、バリア機能が壊れた肌は、外部からの刺激に対して弱くなっているので、化粧品に入っている成分自体が肌に対して悪影響を及ぼすことも充分に考えられます。
そういったことを考えると、肌の表面に保護膜をつくる成分で肌を守り、肌自身のバリア機能が回復するのを待つ、というのが、乾燥肌対策のスキンケアと言えるでしょう。
まとめると、次のようになります。
1.化粧水だけでケアを終わらせず、肌に膜を張るような乳液、クリーム、ジェルなどでフタをしましょう。
2.肌が刺激を受けやすくなっているので、使用するアイテムはできるだけ少なくしましょう。
3.肌がふやけると細胞間脂質や天然保湿因子が肌から流れ出てしまう可能性があるので、シートマスクやローションパックは控えたほうがよいでしょう。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
肌の成り立ちから化粧品までつなげて考えると長い話になりますが、実際に毎日のスキンケアやメイクで気をつけることは、それほど多くありません。
朝、洗顔料を使うのをやめるだけで、夜、クレンジングを目元周りのみにするだけで、乾燥肌は変わってくるかも知れません。
これを読んでくださったあなたが、ずっと健やかな美肌でいられますよう。
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LABORATORY No.7